運動時の糖代謝【なぜ運動すると血糖値が下がる?】

こんにちは。

理学療法士のRYUです。

糖尿病の基本的な治療法は食事運動です。

食事や運動を気を付けることが体に良いということはみなさんが知っていることです。

食事は、甘いものを食べすぎると糖尿病に、しょっぱいものを食べすぎると腎臓病に、お酒を飲みすぎると肝臓を悪くするなど食事内容と病気とのつながりがなんとなく分かっていると思います。

これは、実はとてもすごいことだなと思います。特に誰かにしっかり教えてもらったわけでもないのになんとなく「これを食べるとこれに良くない」とわかっているのですから。

では、運動についてはどうでしょうか。

運動と病気の関係については「この運動がこの病気に良い」という具体的な病気のイメージはあまりないかと思います。

ただ、運動は体に良いというイメージはあると思うので、この記事では運動を行うと体にどのような変化が起こるのかをお伝えできればと思います。今回は、糖質の代謝についてです。

運動時は糖質はどのように代謝されるのでしょうか。
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まずは通常の糖代謝をみてみよう

想像してみてください。

あなたは白米を食べています。その白米が吸収されるまでを追っていきましょう。

まず、口の中に入った白米は咀嚼されて唾液に含まれるαアミラーゼによりおおまかに分解されます。ただし、口の中でモグモグしている時間は人によってまちまちです。よく噛んで食べている人は、早い段階から分解を始められます。

そのまま食道を通り、胃に入りますが、胃では糖は特に分解されないので、そのまま胃の蠕動運動(ぜんどううんどう)という食べ物を送り出す運動によって十二指腸の方へ送られていきます。

十二指腸では、膵臓から分泌される膵アミラーゼによりさらに細かく分解されます。そして最終的に小腸でグルコースという糖の一番小さな単位まで細かく分解され粘膜から吸収され血液中に入っていくという流れになっています。

小腸では、インクレチンというホルモンが出ます。これは、糖の吸収による血糖値の上昇を感知し膵臓からインスリンを分泌するように促す働きのあるホルモンです。

このホルモンの働きにより白米を食べた後に上昇した血糖値はインスリンの働きで下がっていくというような感じになっています。

ちなみに

糖尿病のお薬であるDPP-4阻害薬はこのインクレチンを分解するDPP-4の働きを邪魔することでインクレチンの働きを助け血糖値の上昇に合わせてインスリンの分泌を促す作用のお薬です。

吸収された糖は、肝臓にてグリコ―ゲン(砂糖の塊)として貯めこまれたり、筋肉内にグリコーゲンとして貯めこまれたり、細胞内にエネルギーとして取り込まれていったりします。

どこに糖を運んでいくのか、糖の貯めこみや取り込みに一役買っているのが、インスリンなんです。インスリンは、細胞(これは筋細胞であったり、その他のエネルギ―を必要とする細胞です)の中にあるGLUT4(Glucose Transporter)という糖を細胞内へ取り込んでくれる物質を細胞の表面上に移動させる(トランスロケーションする)ことで糖を細胞に取り込ませます。

簡単な流れですが、このようにして糖は分解・吸収されていくということになります。
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運動時に起こる糖の代謝とは

運動時には、筋肉を動かすためのエネルギーが必要になります。

エネルギーは糖からしか生み出せません。そのため、運動している体ではどうにかして糖を体に補給し続ける必要があります。

エネルギーの調達はホルモンによる調整にて行われています。

特に、運動が中等度以上のものでは、蓄えていた肝臓のグリコーゲンの分解や分解してできたグルコースの血液中への放出を促すホルモンであるアドレナリン、ノルアドレナリン、またタンパク質や脂質からグルコースを作り出そうとする「糖新生」という働きを促す糖質コルチコイド、およびその両方を促すグルカゴンというホルモンの血中濃度が高くなります。

運動時はインスリンの濃度は低下します。これは、運動時に唯一低下するホルモンだそうです。

じゃあ運動中の血糖値は上がり続けるのではないか?

そんな疑問が生まれませんか。だって、体は糖を補給し続けるのに、血糖を下げるインスリンの血中の濃度は低くなるのですから。

しかし、それでは理由があります。

それが、運動時に起こる糖の代謝です。

(引用;日本理学療法士協会主催 認定必須研修会(代謝)資料より引用)

図の右側半分ををご覧ください。

筋収縮(運動刺激)によって、GLUT4のトランスロケーションが活性化され糖の筋細胞への取り込みを促してくれるという働きがあるんです。

運動刺激によって糖の取り込みが促される詳細なメカニズムはまだ不明な点が多いようなのですが、運動中にインスリンの濃度が低下するのもこの機能によって糖の取り込みが担保されるからだとする意見もあるようです。

この運動刺激による糖の取り込みの活性化は、AMPK(5’AMP-activated protein kinase)という筋肉において糖と取り込みに関与している酵素の関連も考えられています。

しかし、マウスによる実験でこのAMPKの働きを抑制したマウスに運動させても糖の取り込みの活性化は維持されていたことからその他の要因の関連も調べられています。

いかがでしたでしょうか。

最後少し難しいところもありわかりにくかったかもしれませんが、要は運動はインスリンを使わなくてもインスリンと同様の効果をもたらすことができるということです。

また、持久的なトレーニングでは骨格筋のGLUT4量は増えるそうです。

運動することで効率よく糖を細胞に取り込み血糖値を下げていくことが可能でしょう。さらに、運動で血糖値が下げられればインスリン注射や糖尿病のお薬は不要になるかもしれません。

頑張って運動していきたいところですね!

それでは!
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