こんばんは。理学療法士のRYUです。
糖尿病の治療と言うと、食事(食事療法)や薬・インスリン(薬物療法)が思い起こされる方が多いと思います。
実は、糖尿病治療の原則は「食事と運動」が基本なんです。
それでも「んーうまく治療が進んでいないな」となった時に薬を力を借りることになりますが、この基本を知ってか知らずか、運動処方をしている医師は少ないというアンケート結果を読んだことがあります。
なので、患者さんも「運動は大事だ」と分かっていながら「じゃあ何をすればいいの?」という状態になっているんですね。
ただし、運動(運動療法)の実施率(実際に患者さんが行っている割合)は食事・薬と比べても低くなっていて、これは医師が教えていないことや、運動がめんどくさくてできていないということが原因として考えられます。
今回は、運動することでどういった効果があるのか、注意することは何か、運動方法についてまとめてみたいと思います。
運動をすると血糖値が下がる
運動をするためにはエネルギーが必要です。なので、運動するとエネルギーが消費されることから糖尿病には良いとされています。どんなエネルギーが消費されるのでしょうか。
筋肉というと「タンパク質」が一番の栄養だというのは一般的な知識としてみなさんもご存知だと思います。
タンパク質は筋肉の材料には必要不可欠ですが、実際に筋肉を動かすには実はグルコースという糖質が必要になってきます。
「じゃあ糖質制限している人は筋肉が動かしづらいんじゃないの?」と思われる方もいるかと思いますが、ご安心下さい。グルコースはいわゆる炭水化物や糖分以外からも体で作り出すことが可能なんです。
つまり、運動することで筋肉はグルコースを必要とするので、血液中に含まれている糖分(血糖)を筋肉にどんどん取り込んでいきます。すると血液中の糖分(血糖)が下がっていくということになって血糖値が下がるという効果が生み出されるわけです。
さらに運動することで筋肉がつけば、その筋肉を動かすには今までより多くの糖質が必要になるので、より血糖値を下げることができるという「プラス効果のスパイラル」が起きてきます。
また、運動をするとダイエットにもいいですよね。
なんとなくわかると思うのですが、肥満は糖尿病にはよくありません。何が悪いって、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの効きを悪くしてしまうんです(インスリン抵抗性)。
内容は難しいですが、こちらにも記事を書いています。
運動して肥満が解消されることでインスリンの効きが良くなり血糖値を下げるインスリンの働きが効率良くなることも運動のメリットです。
もっというと、運動することで体力がつきますよね。体力がつくと、より長い時間運動をすることができたり短い時間でもキツイ運動をこなすことができるようになります。すると、さらに糖質が必要になるので血糖値を下げられるという、これだけ読めばもう運動をしないわけにはいかない気持ちになりませんか!
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運動ができない(しない)のはなぜだろうか
神奈川県が行った小学生を対象にしたアンケート調査では、
低学年から高学年にかけて8割以上の生徒が体育の学習が好きと答えています。(小学6年性女子のみ75%と8割を切っている)
小さい時にはほとんどの人が体を動かすことが好きだったと考えていいのではないかと思いますが、どうして歳を重ねるごとに運動しなくなるのでしょうか。
個人的には、これは圧倒的に運動習慣のなさが影響していると思います。
例えば、若い頃は体育の授業や部活動、サークル活動で運動する機会が設けられています。これらで運動を続けていた人は、社会人になっても、どこかのクラブチームに所属したり、職場の同好会などで運動を継続している人も多くみられると思います。
しかし、社会人になって以降特にそういったチームや活動にも参加しない場合には、なかなか運動する機会はありません。
朝起きて職場に行き夜帰ってきて寝て、、休みの日は寝て過ごすか遊びに出かけるなんていう生活を続けている方多いのではないでしょうか。すると運動する習慣はないですよね。
運動する習慣がないと、いきなり運動して下さいといわれても「どこで何をしたら良いのか」分からない(できない)のも納得がいきます。
つまり、運動習慣がないというのが最大の問題であり、運動習慣を作り出すことができれば運動できない問題は一挙解決だと思うんです。
どうしたら運動「習慣」をつけられるかを考えていきましょう。
運動「習慣」をつけるためには
実際に、運動をされている糖尿病患者さんに聞いた運動例をご紹介します。
・いつもは出勤の時にバスに乗って駅まで行っていたが、少し早く起きて歩いて行くようにした
・仕事帰りに外食をした時には、最寄り駅の1つ前の駅で降りて歩いて帰るようにした
・台所で皿を洗っているときやベランダで洗濯物を干している時につま先立ちで行うようにした
・食後に散歩に行くようにした
これらはすべて正解の方法であり、みなさん普段から行うことで無事、運動「習慣」を身につけることに成功したようです。
少しでも参考になれば幸いです。
運動をする時の注意点
糖尿病患者さんに対して私達がお教えして行っていただく運動は「運動療法」というように、治療の一貫なので、様々な注意点があります。
なので、糖尿病の方で運動したいけど、何が適した運動なのか分からないという方は是非、医療機関にて相談してもらいたいと思っています。
ここでは、なるべく注意点を網羅できるよう書いていきたいと思います。
○低血糖
血糖値を下げる薬を飲んでいる方、インスリン注射をしている場合には運動後に血糖値が下がりすぎてしまうことがあります。運動後に冷や汗や動悸、頭がぼーっとしてきたら危険信号です。
なので、運動は食後(血糖値が上がっているタイミング)に行うようにしましょう。
血糖値を下げる薬の種類によっては低血糖の可能性が低いものもあるので、一度薬剤師にご確認いただくのが一番かと思います。
○普段から血糖値がかなり高めの方
空腹時の血糖値(10時間以上絶食後の血糖値)が250-300mg/dLを超えている方は、運動して血糖値が下がると体が驚いて、逆に血糖値を上げるホルモンを分泌するため、高血糖を助長してしまうことがあります。そのような場合には運動するべきではありませんので、ご注意下さい。
○運動前後で十分な水分摂取を心がけましょう
糖尿病の場合には、血管が脆くなっている場合が考えられ、運動で汗をかくことにより体の水分が少なくなると血管がつまる可能性が高まり脳梗塞や心筋梗塞につながる危険があります。
○足にあった運動靴を選びましょう
糖尿病の場合には、怪我をすると膿みやすかったりすることがあります。それは、通常より血に糖分が多いのでバイキンが繁殖しやすいんですね。そのため怪我の予防というのは非常に大事になってきます。運動で靴擦れなどおこさないようにご注意下さいね。
○中高年の運動は膝や腰の痛みに注意
運動習慣のない方が、突然ジョギングなど行うと膝を痛めてしまったり、腰を痛めてしまったりすることがあります。これは本末転倒なので、散歩などからはじめるのがいいかと思います。
○合併症にも注意が必要
例えば、糖尿病腎症という合併症をお持ちの方は重症度によっては運動制限がかかることがあります。
また、糖尿病網膜症という合併症をお持ちの方も運動制限がかかります。
糖尿病神経障害という合併症をお持ちの場合には怪我には要注意です(ぶつけたり、擦りむいたりしても気づきにくい可能性があります)。
これを読むと、医療機関で専門家に自分に合った運動を処方してもらいたいという気持ちになりませんか。是非、一度医療機関へ相談してもらいたいです。
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運動をはじめましょう
一口に運動と言っても色々ありますよね。
糖尿病にいい運動としてご紹介したいのは、有酸素運動、筋力トレーニング、ストレッチです。
○有酸素運動
歩行、ジョギング、水泳、自転車、水中ウォーキングなど全身を使う運動のことを言います。
運動は、「ハーハー」「ヒーヒー」するような大変な運動をする必要はなく、「いい運動だなーこれなら続けられそう」くらいの運動がいいです。これは、本当にこのぐらいの運動が良くて、あまり大変な運動は逆に運動後に血糖値をあげてしまう可能性があるんですね。
歩行に関して、みなさんがふだんどのくらい歩いているのかについては、こちらをご覧ください。
また、週末だけ運動するだけでも死亡リスクの減少に効果があるという研究もあります。その研究についてはこちらもご覧ください。
○筋力トレーニング
年代によってどのくらいの負荷量にするのは異なりますが、これは筋肉をつける目的に行います。先程も書いたとおり、筋肉量アップで糖質の消費を増やすのがメインの目的ですね。
例にも書きました、皿洗い中つま先立ちなども効果的だと思います。
○ストレッチ
ストレッチは運動というよりは、運動前後のウォーミングアップやクールダウン的な要素があるかと思われる方多いと思いますが、あなどってはいけません。
もちろん、怪我の予防などの効果はあるのですが、ストレッチでも糖質の消費が増えることが最近の研究で分かってきているようです。
ストレッチを行うと筋肉が伸ばされます。その刺激で筋肉が糖質を取り込んでくれるようです。体が不自由な方やご高齢で有酸素運動ができない方にもオススメです。
いかがでしたか。
これを参考にしていただき、普段の生活に運動「習慣」をつけるにはどうしたらいいか、どんな時に取り入れられそうか考えてみて下さい。
それでは!
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