【糖尿病対策】血糖値を下げる運動

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

前回、運動することでなぜ血糖値が下がるのかについて書きました。(→記事はこちら)

骨格筋は体重の約40%を占める組織であり、これらをうまく活用することは糖尿病治療にとって大変有用であると考えられます。

では、運動ならどんな運動でもいいのかというとそれは誤りです。

間違った運動で、低血糖を招いてしまったり反応性の高血糖を引き起こしてしまうことがあるので、注意が必要です。

どんな運動が効果があるのか、実は意外な運動も血糖値を下げるのに有効だということが言われています。

では、どのような運動をしていくのがいいのか、お伝えしていきたいと思います。
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血糖値を下げるのに有効な運動とは

血糖値を下げるのに有効な運動として一般的に推奨されているのは、有酸素運動とレジスタンス運動(糖尿病診療ガイドライン2016)です。

有酸素運動とは、

好気的代謝によってヘモグロビンを得るため長時間継続可能な軽度または中程度の負荷の運動(Wikipediaより)

「好気的」というのは、「酸素を用いる」という意味です。

有酸素運動に対して、「無酸素運動」というものもあり、これは酸素を用いない高強度の負荷の運動を指します。

これらは、運動をするために必要なエネルギーを体で作り出す過程の違いにより分けられています。

有酸素運動では、主にTCAサイクルと呼ばれる回路においてエネルギーを作り出します。(これらの代謝経路についてはいずれまとめたいと思っています。)

一方無酸素運動では、リン酸系と解糖系という回路においてエネルギーを作り出します。

いずれも血糖値は低下しますが、糖尿病の方に運動を勧める場合には、有酸素運動を勧めます。

理由としては、

①無酸素運動のような高強度の運動は持続が難しい(無酸素運動でも短時間であれば効果がある)

②無酸素運動は血糖値を上げるホルモン(アドレナリンやグルカゴンなど)の分泌を促すため、反動的に血糖値が上昇してしまう可能性がある

③特に、高齢者や高血圧症、冠動脈疾患の既往がある方の場合には安全性に優れている

などが挙げられます。(標準理学療法 2017)

軽度から中等度程度の運動であるため、ウォーキングやジョギング、水中運動、サイクリングなどが有酸素運動として挙げられます。

レジスタンス運動は、「抵抗運動」と訳され、いわゆる筋力増強訓練です。

レジスタンス運動の効果としては筋量が増加することで糖のエネルギー使用を促すことが挙げられます。

筋量を増加するためには、一定以上の負荷をかける必要がありますが、比較的低強度でも反復した運動により糖代謝を改善する可能性があり、特に高齢者で低強度のレジスタンス運動は有用であるとされています(糖尿病治療ガイドライン2016)。

ガイドラインに記載されているのは、有酸素運動とレジスタンス運動です。

しかし、近年ストレッチングによる糖代謝への効果が注目されていますのでご紹介します。
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ストレッチングだけでも糖の利用が促進される?!

ストレッチングは筋肉を伸張するということですよね。

この伸張された刺激により、筋肉への糖の取り込みが促され血糖値を下げることができるのです。

これは、前回の記事でも書きました通り、インスリンの作用と同様の働きがありますが、インスリンには依存せず、伸張などの運動刺激のみで起こる反応です。

そのメカニズムはわかっていない部分も多く、今後の研究が待たれる所ですが、いくつかの仮説が立てられています。

その1つが前回も書きました、AMPK(5’AMP activated protein kinase;AMPキナーゼ)というものによる働きです。

AMPKは、筋肉でエネルギーの消費が起こった時に起こる化学的な変化によって発生する物質です。

ラットの骨格筋においてAMPKを活性化すると筋肉内への糖の取り込みが活性化(Hayashi T,Hirshman MF,et al,1998)(Kurth Kraczek EJ,Hirshman MF,et al,1999)

さらに高強度、長時間の運動や高い張力(筋の張る力)を発揮する運動ほどAMPKが活性化する(Mushi N,Hayashi T,et al,2001)(Ihlemann J,Ploug T,et al,1999)ことが分かっています。

しかし、AMPKが活性化しないようにした骨格筋を伸張した場合にも筋肉内への糖の取り込みが活性化している(Iwata M,Hayakawa K,et al,2007)ことから、AMPK以外にも糖の取り込みを促す物質の存在も示唆されています。

運動するときの注意点

該当する場合には運動はお休みにしたほうがいいでしょう。

②空腹時血糖値が250㎎/dL以上で尿からケトン体が出ていると言われている

③収縮時血圧が180mmHg以上

④安静時の時点で心拍数が100回/分以上

症状としては、

①動悸や脈の乱れを感じる

②胸痛や締め付けられる感じがする

③関節や筋肉に強い痛みがある

④気分が悪い

⑤目がかすんでいる

⑥めまいがする

⑦いつもと様子が違って疲れ方が異常

⑧低血糖の症状がある

これらに1つでも当てはまれば運動は控えた方がいいと思います。

また、これじゃあいつまでたっても運動できないよという場合には主治医や、理学療法士に相談してみてください。

いかがでしたでしょうか。

運動は、やって損はない有用な治療法ですが、実際の実施率は低く、運動習慣が元々ない方が多い現代において、新たに習慣を作っていくことの難しさを反映していると思います。

また、適切な指導の元で行わないと危険を伴うものですが、十分な指導を受けられるような体制がなかなか十分でないということも影響しているような気がします。

これを読んでくださった方の少しでもお役に立てれば幸いです。

それでは!
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