こんにちは。
理学療法士のRYUです。
今回は、コロナウィルスと糖尿病の関係について書かれているメタアナリシスの紹介です。
糖尿病をもつ方がコロナウィルスに感染することで重症化する可能性があるということは、ニュースなどでも取り上げられていますが、私自身論文を読んだことがなかったので、この機会に読んでみました。
読んだ論文はこちらです↓
Fadini GP, Morieri ML, Longato E, et al:「Prevalence and impact of diabetes among people infected with SARS‑CoV‑2(コロナウィルス感染者の糖尿病有病率と影響)」 J Endocrinol Invest, 43,pp867-869,2020 Mar 28.
レター形式なので、内容は端的なものになっています。
レター(Letter, Communication)は、掲載された雑誌へのコメントや意見を述べたり、自分の研究結果を短くまとめ、掲載論文と比較し反論したりする場合に用いられる。
(論文の読み方・とらえ方,藤本修平ら,羊土社,2020より引用)
先日、論文の読み方・とらえ方についての本を紹介しましたので、活かせる部分についてはこの記事内でも活かしていこうと思います。
PICO/PECO
P(Patient)コロナ罹患患者
I/E(Intervention/Exposure)なし
C(Comparison)なし
O(Outcome)糖尿病有病率、影響(重症度・進行度)
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結果
コロナウィルスに感染した2108人の中国人の情報を12の論文から得た。
平均年齢は49.6歳だった。
糖尿病の有病率は10.3%だった。
比較として、2013年における中国全土の糖尿病有病率は10.9%、40-59歳の年齢層では12.3%だった。
Fadini GP, Morieri ML, Longato E, et al:Prevalence and impact of diabetes among people infected with SARS‑CoV‑2, J Endocrinol Invest, 43,pp867-869,2020 Mar 28より
こちらは、論文中から引用したフォレストプロット(結果を視覚的に確認でききるようにするための図)です(bの図は後で引用します)。
ここで確認していきたいのが、統計学的異質性(研究間の結果にばらつき)があるかどうかです。
統計学的異質性の指標に多く使われているのは、コクランのQ検定、I²統計量です。
コクランのQ検定は左下のp値を見ます。
p≦0.1であれば異質性があることに疑いを持つ
p≦0.05であれば異質性がある
今回は0.00と書いてあるので、異質性がある=研究ごとの結果にばらつきがあるといえます。
I²統計量は、左下のI²を見ます。
0-40%は重要ではない異質性
30-60%は中等度の異質性
50-90%で大きな異質性
75-100%で高度な異質性
今回はI²=69%なので、大きな異質性があるという解釈になります。
全体の有病率は図のひし形の部分をみます。
全体の有病率は0.10
95%信頼区間は0.07-0.13
95%信頼区間に0を含んでいないので、ばらつきが少なく有病率に有意差があることがわかります。
結果➁
アウトブレイクの中心となったパドバ(イタリア)の大学病院では146人のコロナウィルス感染者のうち糖尿病有病者は13人(平均年齢65.3歳)であり、有病率は8.9%(95%信頼区間5.3-14.6)であった。
比較すると、同じ地域の糖尿病の有病率(2018年)は全体で6.2%、年齢層55~75歳(平均65歳)で11.0%だった。
コロナウィルス感染者の糖尿病有病率が比較的低いのは過少報告、偶然、または生物学的な原因によるものかもしれない。
中国人患者を対象とした6件のメタアナリシス研究は、重症度、転帰別の糖尿病有病率を報告した(n=1687人)。
疾患経過が悪化したものは、いい経過を辿ったものと比べ相対リスクは2.26(95% CI 1.47-3.49)であった。
2020年3月17日現在、コロナウィルスに感染して死亡したイタリア人患者(2003人)の年齢中央値は 80.5(IQR[四分位範囲] 31-103)で、70%が男性であった。
併存疾患に関する利用可能な情報を持つ死亡した355人の患者のうち、糖尿病有病率は35.5%であった。
2018年のイタリア市民の糖尿病有病率は、同年齢・同性の分布で20.3%であった。
このように、一般集団と比較したコロナウィルスの感染により死亡した糖尿病患者の相対リスクは1.75だった。
これらのデータに基づいて、糖尿病はコロナウィルス感染のリスクを増加させないが、悪化させる可能性がある。
Fadini GP, Morieri ML, Longato E, et al:Prevalence and impact of diabetes among people infected with SARS‑CoV‑2, J Endocrinol Invest, 43,pp867-869,2020 Mar 28より
異質性の評価をしてみます。
コクランのQ検定の結果をみてみるとp=0.16となっており、こちらでは異質性はないとなります。
I²統計量の結果をみてみるとI²=37%となっており、こちらでは中等度の異質性と判断できます。
RRというのが相対リスク(relative risk)のことで、今回で言うと糖尿病が既往にない人に比べて糖尿病が既往にある人が何倍死亡リスクがあるのかということです。
全体の相対リスクは一番下を見ます。
相対リスク2.26(95%信頼区間1.47-3.49)
相対リスクの場合には95%信頼区間に1を含んでいる場合には有意差はないと判断しますので、今回は有意差があると判断できます。
10か月ほど前のもので、しかもレターなので詳しい解析がないですが、またコロナ関連の論文を読んだらまとめてみたいと思います。
それでは!
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