こんにちは。
理学療法士のRYUです。
DKDという言葉を聞いたことがありますか?
DKDとは、Diabetic Kidney Diseaseの略称であり日本語では「糖尿病性腎臓病」と訳します。
糖尿病の3大合併症の1つである糖尿病性腎症はDiabetic Nephropathy;DNと呼ばれます。
DKDという言葉は最近言われている言葉です。
DNとDKDは何が違うのでしょうか。
今回は、DNとDKDの違いについてご紹介したいと思います。
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糖尿病性腎症(DN)は従来の典型的な例
糖尿病性腎症は、糖尿病3大合併症の1つです。
詳しくは以前ご紹介しましたが、もう一度おさらいしましょう。(以前紹介した記事はこちら)
腎臓は血液をキレイにする役割があり、糸球体という所でいらない老廃物は尿として排泄、必要な物は尿細管という所で再吸収するという役割があります。腎症でこれらが障害されると老廃物が体に溜まったり(尿毒症)、本来再吸収される物が排泄されてしまったり(アルブミン尿・タンパク尿)という状態になります。
原因としては、長期にわたる高血糖の結果、糖尿病特有の細小血管が障害されることが挙げられます。
病期は以下のようになります。
病期 | 尿アルブミン(㎎/gCr)or
尿蛋白値(g/gCr) |
GFR(eGFR)(mL/分/1.73m2) |
第1期(腎症前期) | 正常アルブミン尿(30未満) | 30以上 |
第2期(早期腎症) | 微量アルブミン尿(30-299) | 30以上 |
第3期(顕性腎症) | 顕性アルブミン尿(300以上)or
持続性蛋白尿(0.5以上) |
30以上 |
第4期(腎不全期) | 問わない | 30未満 |
第5期(透析療法期) | 透析療法中 |
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糖尿病性腎臓病(DKD)はDNの非典型的な例のこと
香川大学の西山先生によれば、DKDの厳密な定義付けについてはまだ結論が出ていないとのことです。(西山;Diabetic kidney Disease(DKD),腎・高血圧の最新治療,7(1),2018,p40)
では、DKDとはなんなのか。
DNの病期は先程の表にある通り、尿アルブミン・尿蛋白と推定糸球体濾過量により決定されるのですが、近年尿蛋白が陰性であるけれども腎機能障害を呈していたり、糸球体過剰濾過を呈さない例が増えてきているようです。
そうすると腎臓の状態としては悪いのに、DNの病期にあてはめるとそうでもない例があったときに腎臓の状態を正しく把握できないことになってしまいます。
そこで、この非典型例をDKDというふうに呼ぶようになったんですね。
DKDは、CKD(Chronic Kidney Disease;慢性腎臓病)患者のうち糖尿病がその発症に関与していると思われる例を広く指す言葉として位置づけられています。
Afkarian Mらは、1988年から2014年までの国民健康および栄養調査調査に参加した糖尿病患者で20歳以上の成人を対象に糖尿病に起因する腎疾患や尿アルブミン、推定糸球体濾過量を調査しました。
その結果、1988〜2014年の糖尿病患者のうち、糖尿病性腎疾患の全般的な有病率は大きく変化しませんでしたが、尿アルブミンを呈している率は低下し、eGFRの減少率は増加していることが分かりました。(Afkarian Mら;Ckinical Manifestations of Kidney Didease Among Us Adults With Diabetes,1988-2014,JAMA,2016,316(6),pp602-610)
この研究からもDKDの概念に相当する症例が増えてきているだろうことが予想できます。
DKDに相当する場合には要注意!
腎機能が悪化しているのにもかかわらず尿蛋白が陰性だったりした場合には、DNの基準にあてはめて「OK、まだ大丈夫!」ではなく、腎機能は悪くなってくるかもしれないと注意することが必要です。
Dunklerらの研究によれば、アルブミン尿および推定糸球体濾過量は、2型糖尿病の症例における早期CKDの発症および進行を予測する最も重要な因子ではあったものの、その予測能力はあまり大きくはないという結果になっているようです。(Dunklerら;Risk Prediction for Early CKD in Type 2 Diabetes,Clin J Am Soc Nephrol,2015,10(8),pp1371-1379)
現状では、リハビリテーションにおける運動強度の設定もDNの基準に基づいているため、DNのDKDの概念に引っかかるタイプの症例を担当した場合には運動強度の設定については、自覚的な運動強度、運動負荷試験の結果をもとに医師と相談しながら進めていくべきかと思います。
いかがでしたでしょうか。
DKDという新たな概念についてのご紹介でした。
今年の日本糖尿病学会においてもDKDに関しての発表が散見されています。今度注目の概念ではないでしょうか。
それでは!
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