糖尿病でもつい食べちゃう、運動は面倒くさいっていうのはどういう心理なのか

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

「コンプライアンス」という言葉をよく耳にしませんか?

コンプライアンスというのは、complianceという英語で、

「(命令・要求などに)応じる」という意味です。

一般的には、

「企業コンプライアンス→企業が法律や社内の基本的なルールに従って活動すること」

という意味で使われていますが、医療でも使われます。
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例えば、服薬コンプライアンスは、患者さんが決められた薬をきちんと内服することです。

糖尿病で使うとすると、基本的な3大治療について

食事療法コンプライアンス

運動療法コンプライアンス

薬物療法コンプライアンス

ということができますね。

これらが実際にどれくらい守られているのかというと、

食事療法60%

運動療法40-60%

薬物療法

血糖自己測定(SMBG)80%

服薬93%

インスリン自己注射97%

(糖尿病療養指導ガイドブック2014より引用)

となっているようです。

理学療法士である私としては運動療法のコンプライアンスが不良であることが気がかりですが、、やはり生活習慣の変更を必要とする治療のコンプライアンスが不良になりがちです。

糖尿病患者さんの中には頑張って血糖値のコントロールを行おうと努力している方もいれば、面倒臭がって努力しない方、必要だとは分かっていながらもできない方など様々な方々がいます。

そういった方々の心理を分類したのが、「変化ステージ」と言われるもので、Prochaskaという方が提唱したものです。

今回は、変化ステージと、そのステージに合ったやる気にさせるポイントをお伝えしていきます。患者さんのやる気スイッチを見つけていきましょう。

変化ステージ(stage of change)

変化ステージには以下のものがあります。

前熟考期

そもそも問題なのだと考えていない状態です。確かに、糖尿病は自覚症状に乏しい病気だと思うので、そうなりがちなのかもしれません。糖尿病でも甘いものをちょっと食べたところですぐにどうこうなるものではないですし、「ちょっとならいいか」と、その積み重ねが血糖値のコントロールを悪くしていく原因になってしまいます。

熟考期

分かっているけれど、できないという状態です。甘いものはダメだと分かっているけれど、つい食べてしまう。運動は重要だと分かっているけれどうんどうできない(しない)。この段階の方が一番多いような気がします。

準備期

ある程度準備ができており、なにかしらを始めるつもりだったり、既に行動を開始している状態です。ご飯にもち麦を入れて炊こうともち麦を買ってきた。ウォーキングを行うためにウェアを買ってきた。この段階ももしかしたら多いかもしれないですね。「どうせやらないでしょ」「いやまずは形から入ってやるよ、おれは(私は)」という感じですね。

行動期

望ましい行動を初めて半年以内の状態です。ここでは、準備期や熟考期に戻ってしまうことも多いようです。

維持期

望ましい行動開始から半年以上継続できている状態です。

糖尿病の方は、今ご自身がどの段階なのか、考えてみて下さい。また、糖尿病の患者さんを持つご家族の方は、患者さんがどの段階なのか考えてみていただければと思います。

それぞれのステージからその先のステージへ進むためのヒントをお伝えしていきます。
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前熟考期の方へ、次へのステップ

まず、糖尿病が問題だということを認識することから始めます。なので、医療機関で糖尿病の知識、合併症とはなにか、なにが怖い病気なのかなどの一般的な情報を知ることが大切です。

また周りに糖尿病の治療を頑張っている方がいらっしゃれば、その方に話を聞いてみるのも良いかもしれません。

糖尿病の治療を自分で始めるのにあたっては、実際に頑張れば効果が現れるんだということを実感し安心感を得ることが必要です。

熟考期の方へ、次へのステップ

利益と不利益を考え、利益の方が自分にとって大きいと思うことが大事です。

例えば、運動療法を実施した場合の利益と不利益を考えてみましょう。

利益

・血糖値が改善した

・体重が減った

・合併症を防ぐことが出来る

不利益

・体を痛めてしまうかもしれない

・運動する時間を作らなければならない

・疲れてしまう

この場合、不利益に挙がった項目に対する対処法を考えていきます。

「体を痛めてしまうかもしれない」→柔軟体操をして行う。運動には理学療法士などから運動指導を受ける。

「運動する時間を作らなければならない」→一度作ってしまえば継続により習慣化することが出来る。

「疲れてしまう」→まずは日曜日だけやってみる。短時間から始めてみる。

などです。このようにして不利益から生じる障害の程度を軽くしていくことによって、利益の認識を高めていきましょう。

準備期の方へ、次のステップ

具体的な目標を設定していきます。

食事であれば、糖質は1日130gに抑えてみる。カロリーは1600kcalに抑えてみる、など。運動であれば、1日10000歩は必ず歩くようにする。仕事帰りには一つ前の駅で降りて歩いて家まで帰る、などです。

ご家族の方は、この段階にいる患者さんには具体的な目標を一緒に設定し、達成した場合には褒めたりねぎらったりすることでその行動を強化していくという工夫をしていくことが大切です。

行動期の方へ、次のステップ

このステージの方は失敗して行動をやめてしまったり、面倒になって途中で投げ出してしまったりしてしまうことが多いです。

なので、より高度な知識を身に着けていく必要があります。

例えば、食事も糖質量やカロリー数だけではなく、カリウムや脂肪酸などより細かい成分の摂取量にも気を配るようにする。旅行に行った時の食事をどうするかを考える。運動では、歩数だけではなくその運動によって消費したカロリーのことや、ただ歩くだけではなく歩行スピードや歩いている時の姿勢や腕の振り方、靴の種類などにも気を配るなどです。

そうすることで、今の現状に満足するのではなくご自身のさらなる目標や課題を見つけられるようにしていきます。

維持期の方へ、次のステップ

このステージにいる方は、基本的なことから少し応用的なことまで理解した上で継続できている方々です。

その場合には、患者会(例えば日本糖尿病協会などで行われている患者会など)への参加、ご自身のライフイベント(仕事、就職や結婚など)の影響を知ることが大切です。

維持期の方の次のステップというのはないのですが、途中で投げ出さないために現在の療養がご自身の負担になっていないか、負担になっている場合にはどのように改善、工夫していくことができるのかを考えることが必要です。

医療機関では、糖尿病の方を対象に知識の獲得や血糖値のコントロールを目的とした教育入院を行う場合がありますが、その適応となると言われているのは熟考期~維持期の方々です。

前熟考期の場合には、そもそも入院する意義が理解できないため、たとえ入院してもなにか成果があるかというと医療機関から提供される医療によって改善はするものの退院後はまた素の生活に戻るだけなので効果は長続きしません。

糖尿病の方ご自身だけではなく、まわりの方の適切なサポートによって、患者さんの行動がより良いものになります。

この記事を読んで、ご自身や糖尿病のご家族の方の糖尿病の療養が少しでも変わることを祈っています。

それでは!
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