こんばんは。
理学療法士のRYUです。
今回は糖尿病の合併症、、厳密に言えば糖尿病の合併症につながるといった方が正確だと思いますが、
「高血圧」と糖尿病との関係性についてお伝えできればと思います。
糖尿病には多くの合併症があります。
3大合併症(神経障害、網膜症、腎症)、5大合併症(足病変、動脈硬化性疾患)、6大合併症(歯周病)など聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。
その中の動脈硬化性疾患には、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞などの恐ろしい病気があります。
これらには、高血圧が関連していることが分かってきています。
詳しくみていきましょう。
その他の合併症についてはここにすべて載っていますので、ご覧ください。
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高血圧の患者さんはとても多い
これは、なんとなくそうであることがお分かりかと思うのですが、
厚生労働省が実施しているH26年の調査によると、高血圧性疾患の総患者数(継続的な治療を受けていると推測される患者数)は1,010万800人だそうです。
総務省統計局によると日本の人口はH29年4月1日時点で1億2676万1000人だそうなので、ざっと約12人に1人が高血圧で治療を受けていることになります。
治療を受けている方でこれだけの人数いらっしゃるということなので、未治療の方も含めるとさらに人数が増えるのではないでしょうか。
ただ、高血圧といってもその原因には色々な要因が絡んできます。
例えば、喫煙やストレス、加齢や動脈硬化、睡眠不足や飲酒、気温などです。
高血圧の原因がはっきりしないものは、「本態性高血圧症(ほんたいせいこうけつあつ)」と言いますが、糖尿病をお持ちだと、動脈硬化などの影響による高血圧が考えられ、このように血圧を上げる原因になっている病気が存在している場合には「二次性高血圧症」と言って分類上区別されます。
糖尿病の方の4-6割は高血圧を持っていると言われています。
多くの人が悩んでいるであろう高血圧症。
糖尿病との関係についてみていきます。
高血圧と糖尿病の関係
糖尿病があると高血圧になりやすいんです。
血液中に糖が多く含まれている高血糖の状態では、血液から細胞に水分などが行きわたりにくくなり体液量が増えるためです。
簡単にいうと、血液が濃いというイメージでしょうか。血液が濃いので体は血液を薄めようと水分を血液中に移動させます。すると血液の全体的な量が増えるので、血管の太さは変わらないのに中身の血液が増えるわけですから血管には通常よりも圧がかかる=高血圧になるという感じです。
高血糖で脱水になりやすいのも同じ理由です。水分が血液から細胞に移動できにくい環境になってしまって細胞に水分が不足している=脱水ということです。
また、肥満などによるインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪い状態)があると、体はインスリンをどんどん出していきます。すると、インスリンが血液中にたくさんある状態(高インスリン血症)になります。
インスリンには交感神経といって血圧を上げるホルモンの分泌を促したり、腎臓からの塩分(ナトリウム)の再吸収が亢進する作用があるので、そういった意味でも血液量が増えて高血圧につながります。
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血圧変動と動脈硬化性疾患(脳卒中など)との関係
血圧変動が大きいと脳卒中の発症リスクが約10倍になるという研究が2010年に「The Lancet(ランセット)」という権威ある雑誌にて報告されました。
(参考文献;375,2010,Lancet. al et, PM Rothwell)
また、2型糖尿病患者において同様に血圧変動について調査した研究においても血圧の変動が大きいと動脈硬化性疾患を進行させることが分かってきました。
血圧の調整は、心臓から出発してすぐのところにある大動脈弓(だいどうみゃくきゅう)や首のあたりにある頸動脈洞(けいどうみゃくどう)というところに、圧を感知するセンサーがついていてそこからの情報で行われます。
糖尿病があると、この圧センサーの機能が低下するという報告があり、これが血圧の変動に影響しているのではないかとも言われています。
高血圧だけではなく、血圧の変動も動脈硬化性疾患の予防には注意が必要である可能性があるということですね。
糖尿病神経障害などの合併症がでてきますと、起立性低血圧による血圧の変動が生じやすくなってしまうため、それらの発症予防・進展予防も大事ですね。
合併症予防のために気をつけること
イギリスを中心に行われた有名な研究に、UKPDSというものがあります。
これによると、2型糖尿病の方の脳梗塞の発症予防には、手段にかかわらず、血圧を下げたほうが良好な結果をもたらしたようです。
(参考文献;UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group. Tight blood pressure control and risk of macrovascular and microvascular complications in type 2 diabetes: UKPDS 38. UK Prospective Diabetes Study Group. BMJ 1998;317:703-713.)
血圧の目標は、一般的には130/80となっています。
ただし、狭心症や心筋梗塞などの既往歴がある場合には急激な血圧降下は危険であるので、医師の指示の下コントロールを図っていくことが必要です。
みなさんの生活でできる工夫というと、やはり減量、減塩です。
減量の目標はBMIが25未満になるように、つまり
25×身長m×身長m=体重kg
となるので、その体重未満ということになります。
是非計算してみて下さい。
減量には運動も勧められています。狭心症や心筋梗塞の既往歴がある場合には対象にならない可能性がありますが、ウォーキングなどの有酸素運動を行いましょう。
塩分は1日に6g未満が推奨されています。
あとは、バルサルバ運動といって、排便時などにイキむ動作で血圧が上昇します。血圧の変動を抑えるためにもイキまないような工夫が必要です。糖尿病胃腸症という合併症では便秘にもなることがあるので、適切な排便コントロールも大事ですね。
また、寒いと血圧があがりますので、夜間のトイレなど部屋を暖かくするなどの工夫もいいかもしれません。
いかがでしたでしょうか。
糖尿病の合併症につながる高血圧のお話でした。
少し難しくなってしまったかもしれません。
考えてみると合併症と合併症の間にもつながりがあって、あれも気をつけてこれも気をつけてと、気をつけることだらけになってしまうかもしれません。
ただ、正しい情報を知って、その理由も理解できれば、なぜ気をつける必要があるのかがわかるので、多かったとしても、きっとできると思うのです。
私もなるべく分かりやすく、なるべく根拠を持ってお伝えできるようにしたいと思いますし、自分自身ももっと勉強していきたいと思います。
それでは!
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