こんにちは。
理学療法士のRYUです。
先日ケアマネジャーが事例(課題、相談してみたいことなど)を挙げて下さり、それを多職種(医師、看護師、施設経営者、社会福祉士、理学療法士、作業療法士、栄養士、医療系大学教授など40名程度)で検討する事例検討会へ参加させていただきました。
詳細は省きますが、非常に有意義な検討会でありとても勉強になるとともに在宅チームの力強さ、利用者さんを思う気持ちの強さをヒシヒシと感じることができました。
参加できてよかったなと心から思い、また参加させていただけたらと思っています。
と、同時に私が思ったのは医療機関で普段勤務する私の立ち位置、役割はなんなんだろうということです。
リハビリテーションを実施する上では、その方の病状・病態だけでなく、生活歴や社会背景などの情報を元に課題・問題点を抽出し、予後予測を元に目標設定、そして目標を達成するためのリハビリテーションプログラムを立案していきます。
医療機関には病状・病態に関する情報はたくさん集められます。医師や看護師、薬剤師や栄養士も勤務しているので分からないことや知りたいことはすぐに聞くこともできます。
しかし生活歴や社会背景などの情報は入院時に項目化された情報(家屋ー一戸建て、要介護度ー要介護○など)はあるものの、自宅でどのような生活を送られているのか(routine workなど)、生活を続けていく上での課題や家族との関係などは入院中にどこまで深く情報を集め、評価に反映していけるかは患者さんによって多少差があるような気がしています。
なぜなら、ご自身で話すことが難しい方でご家族がなかなか医療機関に来院できない場合や、ご自身で話せる方でも内容がかなりプライベートなため信頼関係ができていない段階ではお互いになかなか話しにくいものだったりするからです。
退院支援をし、在宅チームへ引き継いでいくためには可能な限り在宅チームと連携をとってその方のより細かな情報(特にroutine workや人生、在宅での課題など)を集めていく、そして病院だからこそできる支援を行って在宅チームへつないでいく必要があると思いました。
それは糖尿病で入院されている方の支援を行う上でも同様です。
どこまで今勤務している医療機関で私にできているのか、今回事例検討会に参加して自信が持てませんでした。
そこで、今回は「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることができるようになること」が目的である「地域包括ケアシステム」の視点で、医療機関では何ができるのか、何をする必要があるのかを考えてみたいと思います。
〈スポンサードリンク〉
医療機関には「地域包括ケア病棟」というものがある
地域包括ケア病棟は、急性期医療を経過した患者さんや在宅において療養を行っている患者さんなどの受け入れ、患者さんの在宅復帰支援などを行う機能を有していて地域包括ケアシステムを支える役割を担う病棟とされています。
2019年2月で2368病院、推計79100床の届け出があるそうです(Crinical Rehabilitation 2019,28(6)p512)。
糖尿病教育入院も受け入れの対象になっています。
リハビリテーションは1日平均2単位(40分)以上で入院料の中に包括されているため、リハビリテーションの個別料金はありません。
そのため、これまでの疾患別リハビリテーションのように20分1単位できっちりリハビリテーションを実施するということもできますが、そこまで時間に囚われずリハビリテーションを実施することができるといったメリットもあります。
それが、Point Of Care(POC)リハと呼ばれているものです。
POCリハは、時間や回数に縛られず短時間・頻回な介入もできるので、サルコペニアや悪液質、認知症の方に対しても効率的な介入が可能といったメリットがある一方で、リハとケアの境界が曖昧になったり、疾患別リハ実施者との情報共有に工夫が必要などのデメリットも挙げられます。
しかし早期から患者さんの「しているADL」に介入できるためPOCリハはこれまでにない効果を生めるのではないかと思いました。
〈スポンサードリンク〉
PerFM(Person Flow Management)という概念
PerFMは「患者を生活者の視点でとらえ、病院と地域を一体と考えて、切れ目ない医療介護を提供する(仲井,Clinical Rehabilitation,2019,28(6)p511)」という概念です。
これは一部の病院では既にシステムとして導入されている概念で、特に予約入院では入院前から患者さんのおかれている状況、生活上の課題などの情報を収集し、入院された時点で退院時のゴールを設定するというやり方で行われているようです。
具体的には「患者サポートセンター」「PFMチーム」「入退院支援室」などの部署が病院に設けられ、入院前から情報収集、退院までの見通し、料金に関する説明などをおこなっているようです。
これらの部署を設置するメリットとしては、
・在院日数の短縮
・休日の入院受け入れ
・時間外労働の短縮
・医療費に関するトラブル回避
などが挙げられます(外来から患者の入退院を支援するPatient Flow Management(PFM)が急性期病院の将来を救うより一部引用)。
個人的には人員の確保、場所の確保などに課題があり、すべての病院でシステムとして導入することはハードルが高いような気がします。
しかし、目の前の治療・処置などに忙殺されている所が多いであろう普段の病棟運営を考えるとこのような概念を部分的にでも導入できないか検討してみるのもいいのかもしれませんし、こういう概念があるということを多職種で共有し意識を持ってもらうだけでも効果的かもしれないと思いました。
QOD、ACPとは
QODとは、Quality Of Deathの略で、「死の質」というものです。
QOL(Quality Of Life ;生命の質)という言葉は有名ですが、QODという言葉はお恥ずかしい話初めて聞きました。
QODを向上させるための1つの選択肢として、ACPと呼ばれるものがあります。
ACPとはAdvance Care Planning(アドバンス・ケア・プランニング)と呼ばれるもので、「将来意思決定能力を失った場合の意思決定に備えた、患者によるあらゆる計画の作成(生命倫理百科事典翻訳刊行委員会編,事前指示と事前ケア計画,生命倫理百科事典第Ⅱ巻,2006,p1258)」と定義されます。
ACPに関しては人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドラインが定められています。
地域包括ケア病棟では、このガイドラインを柱に看取り指針を策定することや意思決定の支援をすることが一部の診療報酬に含まれています。
ACPは特に病院だけで行われるものではないと思います。
冒頭でお伝えした事例検討会でも、ACPを行ってみてはどうかというアドバイスが話の中にでていました。
そのアドバイスが出た事例は、超高齢の女性と息子さんの2人暮らしの家庭です。女性は週のほとんどをデイサービスに通っています。息子さんは日中は家に不在になるため、お母さんがデイサービスに出ていることで外出の機会が作れ、他者と交流でき、家に一人にさせるより安心ということがありました。女性としては、デイサービスと同施設内に入所を希望されていました。理由は、デイサービスで慣れた他の利用者さんがいること、家で過ごしても結局日中は一人であること、息子さんに迷惑をかけることなどだったようです。しかし、息子さんとしては「母は自宅で最後を迎えることが一番」と考えているため施設入所には否定的でした。ケアマネジャーとしては女性と息子さん、どちらの立場に立つべきかというものでした。
ACPを行うことで、女性と息子さん、医師や看護師、PT・OT・ST、栄養士や社会福祉士などで今後の方針について話し合い、専門職からのアドバイスをもとにしながら今後の方針について意思統一する機会としたらどうかというアドバイスだったんですね。
ですから、ACPは他職種からのアドバイスをもらいながら今後の人生の意思決定をできるうちにしていく機会ということで、病院以外でも行っているものです。
〈スポンサードリンク〉
病院で地域包括ケアシステムを支える
病院では地域包括ケア病棟以外にも様々な機能をもった病棟があります。
その設置目的も様々ですが、在宅復帰支援という目的はどの病棟においても共通してあるものではないかと思います。
事例検討会で率直に思ったのは、「在宅チームには敵わないな」でした。患者さんのことをしっかり理解している(しようとしている)という点においてです。
そんな中で病院で勤務しながら地域包括ケアシステムを支えるためにできることは、ケアマネジャーを始め他の在宅チームから自宅での生活状況、課題、問題点などの情報収集を行うことだと思います。
PerFMのような概念を取り入れたシステムを持っていなくても、どこの病院でも少なからずやっていることですが、どこまで情報を収集できるのかに関しては差が出てくると思います。
病院に勤務するスタッフに持っていてもらいたい意識としては、退院したら終わりではないということです。
密に連絡を取り合い、入院中のゴール設定と退院後の継続した課題について明確にする努力をすることが必要です。
また、院内でも地域包括ケアシステムについて学び、院内に勤務するスタッフが同じ熱量・方向を向いて患者さんを支えていくという姿勢も必要だと思いました。
いかがでしたでしょうか。
今回は糖尿病とは間接的な関わりでしたが、個人的にとても考えさせられたので備忘録としてもまとめさせてもらいました。
ご意見・ご感想などあればぜひ共有したいです。
ではまた!