糖尿病教育(学習)入院のススメ-理学療法士の視点-

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

理学療法士はリハビリテーション専門職であり、運動のスペシャリストです。

リハビリテーションというと骨折で松葉杖をついている患者さんの隣について一緒に歩いているスタッフというイメージでしょうか。

しかし、実際には骨折だけではなく、脳卒中、脳性麻痺、脊髄損傷、変形性関節症、肺炎、COPD、癌など多くのご病気、お怪我をされた方の機能を回復させるために関わっています。

そして、糖尿病の運動療法についての知識を学んでいる唯一のリハビリテーション専門職です(だと自負しています)。

私が理学療法士として糖尿病患者さんに関わらせていただく時に、どのような検査を行っていくのかについて書いていきたいと思います。

まずは、事前にカルテから十分に情報収集してからですが、その後患者さんとお会いしてから見ていくポイントから書いていきます。
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メディカルチェックポイント

○体型(肥満か痩せ型か)

まず患者さんにお会いしてすぐ分かることです。事前にカルテから身長・体重、BMIの情報をみているので想像はできるのですが、しっかり目で見て確認します。また、顔色などを拝見しその方の体調を確認していきます。

○血圧・脈拍

運動する前の血圧や脈拍を測定し、運動療法を行っても大丈夫かどうか確認します。普段の血圧や脈拍がどのくらいなのかも伺って比較します。

運動する前から血圧が210/120、脈拍が130とかそんな方を運動させてしまったら大変です。

今から患者さんと運動できるのかどうかを判断する1つの基準になります。

○問診(普段の生活状況、普段している運動、食事の内容と回数、職種、痛みの有無、痺れや起き上がった際のめまいなどの自覚症状、低血糖の経験があるか、薬をきちんと飲めているか、目の見えにくさなどないか、など)

問診は時間をかけてしっかり行っています。患者さんのことをよく知りたいからです。なぜなら、よく知らないでただ運動しても、退院した後に運動が続かないからです。

患者さんは千人十色。当たり前ですが、まったく同じ人間はどこにもいません。この患者さんにはどのような運動が合っているのか。そのことを考えながら色々なお話を伺います。

普段の生活状況は、1週間月曜日から日曜日まで一般的にどのように過ごされているのかについて伺います。専用の用紙を用いて患者さんに書いてもらっても良いかもしれません。

もし、普段から何か運動をしている方がいたらどのような運動をどのくらいの頻度で、どのくらいの時間、どのくらいの時間帯に行っているのかを伺います。

食事に関しては、必要があれば管理栄養士と情報共有し指導に役立てたり、運動する時間を提案する際の参考にしたりするために伺います。時折、食事が1日2食や稀に1日1食なんて方もいたりするので、聞いておく必要があると思います。

また、職業は意外に重要です。例えば警備員の方やタクシーの運転手の方などは夜勤があって食事や睡眠が不規則になりがちです。また、デスクワークの仕事をされている方と、肉体労働をされているかただと推奨される食事の摂取エネルギーにも違いが出てきます。運動を提案するときにも、勤務が不規則な方に「月水金は日中食後にウォーキングをしましょう」なんて指導してもできるはずがありませんので、きちんと退院後もできる運動を提案するために情報収集を行います。

痛みの有無は、整形外科的なご病気やお怪我があるかなど確認するためです。膝に激痛があるのに「軽いランニングをしましょう」なんて言えないですからね。

あとは、糖尿病合併症の有無を確認するために自覚症状があるかを伺います。基本的に伺うのは、手足の痺れと起き上がった際のめまいなどの症状です。これは、糖尿病神経障害などに関係する可能性があるので伺います。

低血糖症状は、何度も経験することや、糖尿病神経障害によって無自覚性低血糖といって低血糖の自覚症状が出にくくなることがあります。運動すると血糖値は下がるためリスク管理として低血糖に注意することが必要になります。無自覚性低血糖では、自覚症状が出にくいため通常よりも運動に注意が必要で、場合によっては血糖測定と併用して低血糖を予防していく必要があります。

薬をきちんと飲めるということを服薬コンプライアンスといいます。入院中は、患者さんが薬の飲み忘れがないかどうかを見ていますので、まず飲み忘れはありません。しかし、自宅に帰ってからきちんと飲めるか、「めんどうだなー」と飲まないことがないか、外食などで「もってくるの忘れちゃった」なんてことがないかを考えながら指導を行うことは非常に重要です。服薬を忘れてしまったりすると血糖値のコントロールが乱れます。運動をする際には血糖値が高すぎる場合(250mg/dL以上)には積極的な運動を控えたほうがいい場合があります。そのため、患者さんが退院後にきちんと薬が飲めるかどうかを考えながら運動指導を進めていくことは必要だと思います。

目の見えにくさは、糖尿病網膜症の症状として現れていないかを確認するためにお聞きすることがあります。
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○ウエスト周囲長

メタボリックシンドロームは糖尿病と関係があることがわかっています。メタボリックシンドロームはウエスト周囲長が基準の1つとなっています。

病棟の看護師さんが測定していることもありますが、必要に応じて理学療法士が測定することもあります。

○感覚検査(足部感覚検査、振動覚検査)

感覚検査は、糖尿病神経障害の診断に必要です。

また、糖尿病神経障害がある場合にはバランス能力の低下が疑われ、転びやすかったりして運動をする際にはその能力の評価も必要になる場合があります。

○反射検査(アキレス腱反射)

反射検査も、糖尿病神経障害の診断をするために必要になります。適宜医師と情報を共有していきます。

○運動のパフォーマンス(6分間歩行)

運動能力、いわゆるパフォーマンスを検査するために6分間歩行を行うことがあります。これは、6分間なるべく長い距離を歩いてもらうように指示し、その距離を測定するものです。

○整形外科的な既往歴がある場合や痛みがある場合にはそれらに対する検査

変形性関節症、腰椎圧迫骨折など整形外科的な既往歴があり、その後痛みが継続している場合には運動を継続したり、効果を得るのに影響を与える可能性があります。

○足の観察

靴下を脱いでもらい、足を観察します。足に怪我をしていないか、タコがないか、爪は深爪などになっていないか、水虫などになっていないかなどを観察します。また、足のむくみがないかも確認します。

糖尿病においては、傷口、水虫などから感染症を引き起こす可能性があります。

必要に応じて看護師と情報共有し、足のケアの仕方を指導したり、必要な処置を行ってもらったりします。

糖尿病の運動療法に直接関係のある情報収集項目、検査項目はこのくらいかと思いますが、一般的な関節可動域や筋力も必要に応じて検査していきます。

以上の情報から、医師と相談の上どのような運動が適しているのかを検討します。

継続した運動をしてもらうには、患者さんが糖尿病の治療、療養に関してどのような気持ちでいるのかも重要になります。

簡単にいうと、「どうでもいいやー」と思っているか、「頑張って糖尿病を良くしよう」と思っているかです。

患者さんの気持ちによって指導の仕方が異なります。

患者さんの気持ちがどの段階にあるのかということを「行動変容ステージ」といいます。

運動の指導だけではなく、食事療法や薬物療法の指導においても行動変容ステージに合わせた指導を行っていき、頑張って糖尿病をよくしようの気持ちに向かっていってもらえるようにしていく必要があります。

行動変容ステージについてはまたお伝えできればと思っています。

それでは!
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