糖尿病の療養指導をする上で必要な医療スタッフの態度

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

糖尿病の治療を行うのは、医療スタッフではありません。患者さん自身です。

患者さんが自身で管理し行動することを「セルフケア行動」と言います。

医療スタッフは、適切な指導、つまり適切な内服量、インスリン量、運動量、食事量などを指導しますが、それを患者さんが守り、セルフケア行動をとらなければ意味がありません。

また、患者さんが主体的に治療に取り組むことを「アドヒアランス」と言います。

医療スタッフは、指導する上で患者さんのアドヒアランスと、先日お伝えしたコンプライアンスをいかに高めるかがとても重要です。

今回は、医療スタッフ向けに糖尿病の療養指導を行う上での必要な態度、考え方についてまとめていきたいと思います。
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セルフケア行動に影響を与える3つの要因とは

セルフケア行動に影響を与える要因は3つあります。

外的要因(周りの環境による影響)

内的要因(患者さん自身の心理的な要因)

強化要因(行動を促すことに働く要因)

それぞれは、3つに分けられるもののそれぞれが影響しあっており、1つがプラスに影響すれば相乗効果に、1つがマイナスに影響すればそれも相乗効果となります。

それぞれの要因について詳しく見ていきましょう。

外的要因

外的要因には、以下のものがあります。

治療環境

家族・社会

医師との関係

合併症

糖尿病教育

治療法

病態・病型

(糖尿病療養ガイドブック2014より引用)

主に、医療スタッフから受ける影響と家族・社会から受ける影響が大きいように思います。

治療環境、合併症や治療法、病態・病型についても医療スタッフから説明されることなので、伝え方やコミュニケーションによって患者さんの捉え方が異なると思います。

外的要因について医療スタッフが行うべき点としては、患者さんが問題点を理解し、そのためにどうやって解決していくのかを自身で考えられるようにしていくことです。

そのためには、患者さんが何に問題を感じているのか、どのように感じているのかを確認し、どうなればいいと思っているのかを聞いた上で目標を設定していきます。

そして目標をどうしたら達成できるのかを考えていきます。

目標の設定、そしてその解決方法を患者さんに考えてもらう上で必要な医学的な情報を医療スタッフは提供していく必要があります。

目標の設定、解決方法を考えるサポートは医療スタッフから得られる協力だけではなくご家族からも得られるとさらにいいでしょう。

専門的なことはわからなかったとしても、患者さん自身が考えていることを聞き出し、それを肯定的に理解していあげることで患者さんのセルフケア行動は確実なものになっていきます。
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内的要因

内的な要因を考える上で以下のものがあります。

ヘルスビリーフ(健康信念)

セルフ・エフィカシー(自己効力感)

ヘルスローカスオブコントロール(健康に関するコントロールの所在)

(糖尿病療養ガイドブック2014より引用)

ヘルスビリーフ(健康信念)

ヘルスビリーフ(健康信念)は、健康に対して人が良い行動をするのに影響する要因について考えたものです。

2つあります。

1つは、脅威に感じることです。

このままだとまずいことになる可能性があることを感じること。

そして、一生治らない病気になってしまったという重大性を感じることです。

2つ目は、行動をすることで起こるメリットとデメリットを天秤にかけることでメリットの方が大きいと認識することです。

例えば、

合併症が起きたら失明する可能性がある、失明したら今まで通り生活できない。透析を受ける可能性がある、透析になったら自由な時間が奪われてしまう。

運動療法で糖尿病の合併症が予防できる。運動時間を作り出さなければいけないが、合併症を予防できることと、運動時間を作り出す労力を天秤にかけると運動時間を作り出すほうがいいという風に考えられると、内的な要因によりセルフケア行動を促せるという考えです。

セルフ・エフィカシー(自己効力感)

セルフ・エフィカシー(自己効力感)とは、行動をうまく行うことが出来る「自信」のことです。

セルフ・エフィカシーを高めることはセルフケア行動を促進します。

どうすると高まるかというと、ポイントは2つあります。

1つは、成功体験です。

自分で行動しそれが成功した時に自信をつけることができます。

改めて書きましたが、これは当たり前なことですね。

もう1つは、モデリングといって自分と境遇や状況が似ている人(モデル)に実際に行動してみてどうかや行動を継続するためのコツを聞いてみることです。

この2つを経験させる機会を作ることでセルフ・エフィカシーが高まり、セルフケア行動を促進することができるます。

ヘルスローカスオブコントロール(健康に関するコントロールの所在)

ヘルスローカスオブコントロールとは、健康や病気の原因をどこに求めるかという考え方で、

自分

他者

運・偶然

のうち、どこに原因があると考えているかです。

自分だと考えている方には、なるべく他者の協力ではなく自分で管理・解決できるように指導していくのが良いです。

他者や運・偶然だと考えている方には医療スタッフやご家族など他者による協力が得られるようにすると良いです。

強化要因

強化要因は、患者さんがとった良い行動・結果、悪い行動・結果を固定化させる要因です。

つまり、良い行動・結果が強化されれば良い行動を取り続けられる方向に向かいますが、悪い行動・結果が強化されれば悪い行動を取り続けてしまう可能性があります。

例えば、HbA1cや血糖値の結果を患者さんの行動と結びつけて、

「運動を継続したからこれだけ数値が下がった」と認識してもらえれば運動の継続につながるというわけです。

逆に

「運動を継続しても数値が下がらなかった」という場合には、運動の実施をマイナス方向に強化してしまうので、こういった手法はとらないほうがいいと思います。

HbA1cや血糖値だけではなく自覚症状の程度を行動と結びつけたり、行動そのものを医療スタッフが賞賛することでも行動が強化されます。

いかがでしたでしょうか。

患者さんには色々な方がいて、糖尿病についての考えや認識も様々です。

患者さんが糖尿病についてどのように考えているのか、個々に合わせた指導や関わりを行うことで患者さんの行動を変えていくきっかけになります。

医療スタッフの皆さん、つい、日々の激務の中で「やることをやっていればいい」と思ってはいませんか。

きちんと患者さんをアセスメントし、他職種で患者さんとの関わりを検討した上で患者さんの良い行動を強化していきましょう。

それでは!
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