糖尿病と癌の関係と予防-【新シリーズ】糖尿病の合併症-

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

今回は、糖尿病と癌の関係についてです。

その他の合併症についてはここにすべて載っていますので、ご覧ください。

こんなにある糖尿病の合併症

現在、全癌を含めると、男性の62%、女性の46%は生涯に癌になるといわれております。

語弊がないように、初めに伝えておきたいのですが、最近糖尿病を持っている方の癌になるリスクについての研究結果がみられるようになりました。

そのことを伝えていきたいと思うのですが、これは糖尿病の「合併症」というよりも、「併存疾患」つまり、糖尿病だと一部の癌になりやすいと言われているということで、例えば糖尿病だから血糖コントロールが不良だったりすると癌になるというようなものではありません。

因果関係についてはまだ不明な部分が多いようです。

あくまで、統計的に一部の癌になっている方が多いということなので、その点をご了承下さい。

それでは、糖尿病を持っている方がなりやすいと言われている癌とはどういったものなのでしょうか。その原因とは何なのでしょうか。みていきたいと思います。
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糖尿病では癌になりやすい

わが国の疫学データでは、糖尿病患者における全癌罹患リスクは1.2倍(男性1.19倍、女性1.19倍)に増加するとされている。

(引用;糖尿病療養指導ガイドブック2014)

また、こうも書かれています。

膵臓癌1.85倍、肝臓癌1.97倍、大腸癌1.40倍が有意に高いとされている。一方、乳癌1.03倍、前立腺癌0.96倍では、糖尿病との明らかな関連はみられなかった。

(引用;糖尿病療養指導ガイドブック2014)

癌と言っても色々な部位にできるので、すべての癌を含めると約1.2倍かかりやすいと言われているようです。

部位別では、特に膵臓癌、肝臓癌、大腸癌になるリスクが高いということです。

しかし、癌の発生には喫煙や、食事、肥満、身体活動度、年齢などの様々な原因が絡まり合っているため、純粋に糖尿病だからこれらの癌になりやすいともいいきれないという問題点の指摘もあります。

また、例えば膵臓癌などは癌をきっかけにして糖尿病を発症する場合もあります。なので、その前後関係が正確ではない可能性や、糖尿病の方はそうでない方に比べて病院で検査をする機会が多いので、癌の発見率が糖尿病でない方よりも高い可能性(問題)も指摘されています。

ちなみに、糖尿病有り無しにかかわらず、生涯でこれらの癌になるリスクがどのくらいあるのかについても結果が示されています。

膵臓癌(男性2.2%、女性2.1%)

肝臓癌(男性4.0%、女性2.2%)

大腸癌(男性8.5%、女性6.7%)

(引用;糖尿病と癌に関する委員会報告,糖尿病,56(6),2013)

まだまだ証拠不十分といった状態なのですが、今後の研究発表にも注目していきたいと思います。

それでは、次に糖尿病だとなぜこれらの癌になりやすいといわれているのか、その理由についてみていきましょう。

糖尿病で癌になりやすいと言われる理由

まだ研究途中であり、これだ!というものはないのですが、現在考えられているのは、以下にわけてお伝えしていきます。

(参考文献;糖尿病と癌に関する委員会報告,糖尿病,56(6),2013)

インスリンの効きが悪くなることで過剰にインスリンが分泌されるから

糖尿病の特徴の1つにインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことが挙げられます。

すると体はインスリンを多めに分泌するようになります。この血液の中にインスリンが過剰に含まれている状態になる(高インスリン血症)ことにより癌の発生に関わる受容体の働きを活発にしたり、細胞の増殖と、古い細胞の生まれ変わりを抑えてしまうことによる癌の発生が考えられています。

高血糖でDNAに変異を生じさせる

高血糖状態では、糖をエネルギーに変換するために体はフル活動しています。活動しているのは、ミトコンドリアという細胞の中にあるもので酸素を使って糖を燃やして(酸化して)エネルギーを抽出してきます。

その過剰な働きにより、「活性酸素」という体に悪い物質が作り出される割合が高くなります。通常活性酸素は無毒化されるのですが、たくさん活性酸素が作り出されると「もうキャパオーバー」状態になってしまい、体に悪さをしてしまうというわけです。そのキャパオーバー状態を、いわゆる「酸化ストレス」というんですね。

どういう悪さをするのかというと、DNAを傷つけるんです。そして癌化するというわけですね。

逆に、活性酸素の有害性を治療に応用しているといえるのが放射線治療なので、一概に悪者かというとそこには賛否あると思うのですが、今回は高血糖による活性酸素の増加からDNAに損傷を追わせるという意味で悪者としました。

肥満による慢性的な炎症

2型糖尿病の場合には、高頻度で肥満になっています。肥満は、脂肪細胞において、慢性的な炎症が起きているそうです。

細胞の癌化と、慢性的な炎症というのは関連がある可能性があるらしく、この肥満による炎症が癌と関係している可能性もあるようです。

ここまで読んで、「おや?」と思われた方。

「インスリンが過剰に分泌されるのはよくないのか。じゃあインスリン注射ってどうなの?」

と思われましたか?あとで、これについても書きます。

可能性の範囲を超えませんが、原因を押さえたところで、予防法はどういったものになるのでしょうか。もちろん、今まで書いてきた癌になりやすい理由の内容を考えればおわかりですよね!
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予防方法とは

インスリン抵抗性を改善して高インスリン血症にならないようにする。

そして、

高血糖状態を改善する。

この2点です。

なので、いわゆる糖尿病の治療をしっかり行っていくことが癌の予防となると思います。

また、赤い肉や加工した肉の摂取が少ないほど、野菜などの食物繊維の多い食品の摂取が多いほど癌のリスクは低くなるようです。

このあたりは、肉などどんどん食べて大丈夫という糖質制限食のデメリットとなり得るかもしれませんね。

あとは、アルコールの過剰な摂取、喫煙ももちろんがんのリスクを高めます。

インスリンの過剰分泌が癌と関係あるならインスリン注射って大丈夫なの?

インスリン注射だけではなく、インスリンの分泌を促すお薬であるSU薬速攻型インスリン分泌促進薬もそうですが、インスリンの過剰分泌が癌と関係あるならこれらは安全なのでしょうか。

統計データでは、インスリンに関しても、インスリンの分泌を促すお薬にしても、現時点でははっきりとした結論には至っていないようです。

つまり、現時点ではインスリンを打ったからといって、インスリンの分泌を促すお薬を飲んだからといって癌になりやすくなるとは言えないということです。

ただ、チアゾリジン薬というタイプのお薬では膀胱癌になるリスクがあるということで、「膀胱癌の患者には使用しない」旨がお薬の取扱説明書には載っています。

日本糖尿病学会と、日本癌学会は以下の提言を出しています。

特定の糖尿病治療薬が癌罹患リスクに影響を及ぼすか否かについての現時点でのエビデンスは限定的であり,治療法の選択に関しては,添付文書などに示されている使用上の注意に従ったうえで,良好な血糖コントロールに
よるベネフィットを優先した治療が望ましい.

(引用;糖尿病と癌に関する委員会報告,糖尿病,56(6),2013)

逆に、BG薬であるメトホルミンを使用している患者は使用していない患者に比べ癌のリスクが低いというような論文もあるのですが、低いと言えない論文も出ており、癌のリスクが低くなる方の論文もあるのですが、こちらも統一した見解が得られていないのが現状のようです。

いかがでしたでしょうか。

あくまでも、統計的に見ると、糖尿病を持っていると癌になるリスクがあるという話であり、その因果関係はまだわからないことが多いです。

ただし、原因と考えられているのは、糖尿病特有のもの(高血糖や、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性)であり、糖尿病の治療をしっかり行う必要があるという1つの理由になるには十分ではないでしょうか。

それでは!
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