糖尿病と貧血―貧血を把握し心不全、腎不全を予防しよう―

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

貧血と糖尿病には実は関係があります。

糖尿病で気を付けなければならない貧血は「腎性貧血(じんせいひんけつ)」と言って、腎臓が関係している貧血です。

ということは、やはり糖尿病の3大合併症である、糖尿病腎症の進行と合わせて気を付けるべきものだということです。

私も貧血全般には詳しくなかったので、今回色々と調べてみました。

それでは、ご紹介していきますね。
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貧血の種類

貧血にはその原因や形態からいくつかに分類されています。

原因による分類では、

1 造血(血球を作り出す)作用はあるものの、何らかの原因でうまくいかず正常な赤血球が作り出せない

(ヘモグロビンがうまく作れない)

〇鉄欠乏性貧血→ヘモグロビンを構成する鉄が不足

〇鉄芽球性貧血→鉄があってもヘモグロビンがうまく作れない

〇サラセミア→ヘモ(鉄)グロビン(タンパク質)のうち、グロビンがうまく作れない

(DNAがうまく作れない)

●巨赤芽球性貧血→赤芽球は赤血球になる前の赤ちゃん赤血球のことで、これがビタミンB12欠乏や葉酸欠乏により異常な出来になってしまう貧血のこと。

〇ビタミンB12欠乏性貧血→悪性貧血、胃の切除、腸の吸収異常、菜食主義などでビタミンB12が不足

〇葉酸欠乏性貧血→なんらかの原因で葉酸が不足する

(造血細胞という血球が生まれる初期段階の細胞の異常で正常な赤血球が作れない)

〇骨髄異形成症候群(MDS)

2 造血細胞の数不足による造血作用の低下

〇再生不良性貧血

〇赤芽球癆(せきがきゅうろう)

〇脊髄癆(せきずいろう)

〇薬剤、放射線、ウイルスにより造血細胞が傷害される

3 栄養不足や、造血に関係するホルモンの関係による造血作用の低下

〇腎性貧血→エリスロポエチンの減少

4 出血による血球の喪失

5 溶血(何らかの原因による血球の破壊)

赤血球が壊されるか、壊れてしまうことによる貧血

形態による分類では、

1 赤血球のサイズが大きいか普通か小さいか

大球性→赤血球が通常より大きい

正球性→通常サイズ

小球性→通常サイズより小さい

2 ヘモグロビンの濃度が普通か薄いか

正色素性→通常濃度

低色素性→ヘモグロビン量が少ない

例えば、

小球性低色素性貧血にはサラセミア、鉄芽球性貧血、鉄欠乏性貧血

正球性正色素性貧血には再生不良性貧血など

大球性正色素性貧血には悪性貧血、葉酸欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏性貧血

などが挙げられます。

貧血は非常に種類が多く、その診断は医師に委ねられますが、私たち医療従事者も貧血の種類や疾患から考えられるリスクなどで貧血について把握しておくことは非常に有用だと思われます。
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腎性貧血―腎臓でなぜ貧血?―

腎臓では、エリスロポエチンというホルモンが分泌されます。

エリスロポエチンは、赤血球を作る上で重要です。

赤血球は造血幹細胞という血球の卵から何段階も経て作られます。

大きく、造血幹細胞→赤芽球→赤血球という流れです(もっと複雑ですが)

エリスロポエチンは、造血幹細胞→赤芽球の段階で働き、赤血球が作られるのに働いているホルモンです。

腎機能が低下すると、このエリスロポエチンが減少することで赤血球がうまく作れなくなることで貧血となります。

糖尿病腎症にはその重症度から5つのステージに分かれていますが、通常はステージ3から貧血の患者の割合が増加するそうです(エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2009より引用)

しかし、元々あるご病気の関係もあり、早期でも貧血になる場合もあるようで、適宜検査して貧血の有無をチェックしていくことが必要です。

心血管疾患と貧血との関係を調べた研究では、

CKD(慢性腎不全)のない患者においては貧血は心血管疾患の危険因子にはならず、CKD存在下での貧血の合併が心筋梗塞、脳梗塞、総死亡を増加させる(Vlagopoulos PT,J Am Soc Nephrol,2005)

ことや、

腎機能と貧血は慢性心不全患者の予後に対する危険因子であり、特に両者が存在すると予後が悪い(Al‐Ahmad A,J Am Coll Cardiol,2001)

ことが示されています。

また、その治療効果を調べた研究では

早期治療群は、後期治療群に比べ、有意に腎機能障害の進行が抑制される(Gouva C,Kidney Int,2004)

ことが示されており、早期に貧血を発見し治療をすることによって腎障害の進行を食い止めるだけではなく、心疾患を予防し生命予後を改善させることにつながると思われます。

腎性貧血の診断は難しい?

腎性貧血の診断はもちろん医師が行います。

診断について調べてみたところ、他の貧血はないかどうかを鑑別していく必要があるということが分かりました。

これは、日本透析医学会雑誌に書かれている鑑別です。

(日本透析医学会雑誌,49(2),2016pp109‐113)

このように、他の貧血ではないことを否定し、初めて腎性貧血と診断していきます。

いかがでしたでしょうか。

糖尿病で治療中の方は、是非腎機能にも着目していただき、腎症の悪化を予防していきましょう。

それでは!
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