糖尿病の真実―糖尿病だと筋力低下が起きる―

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

糖尿病に対する運動療法の効果は今までお伝えしてきた通りです。

血糖値を下げる運動

なぜ運動すると血糖値が下がる?

今回は、糖尿病では筋力が低下することを示した論文をご紹介し、なぜ糖尿病で筋力が低下するのかについてお伝えしていければと思っています。
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糖尿病における筋力と筋量

「糖尿病では筋力が低下する」

これを示唆したいくつかの論文があります。

まずは、Andersen H, Nielsen SらによるMuscle strength in type 2 diadetes(2型糖尿病における筋力,2004年)という論文です。

これによれば、糖尿病の病歴が5年より長い糖尿病患者と健常者を比較したところ、糖尿病患者では膝関節屈曲筋力が14%、足関節背屈筋力が17%、底屈筋力が14%有意に低下していたことを報告しています。

また、Nomura T,Ikeda YらによるMuscle strength is a marker of insulin resistance in patients with type 2 diabetes(筋力は2型糖尿病患者におけるインスリン抵抗性の指標である,2007年)という論文では、下肢筋力とインスリン抵抗性の間には負の相関関係があると報告されています。

つまり下肢筋力が高いほどインスリン抵抗性(インスリンの効きの悪さ)は低くなり、下肢筋力が低いほどインスリン抵抗性が増大するという関係です。

最後に、Park SW,Goodpaster PHらによるDecreased muscle strength and quality in older adults with type 2 diabetes(高齢2型糖尿病患者の筋力と筋力の質の低下,2006)という論文では、高齢糖尿病患者において筋量は保たれているものの、単位筋量に対する筋力(筋力の質)が上下肢ともに低いという結果を報告しています。

つまり、筋量はあっても、健常者と比べると同じ筋量から発揮される筋力は低下しているということです。

この3つの論文から、糖尿病では筋力が低下する可能性があることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

では、なぜ糖尿病では筋力が低下するのでしょうか。
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糖尿病神経障害による筋萎縮

ここでまた1つ論文の紹介です。

Andersen H,Poulsen PLらによるIsokinetic muscle strength in long-term IDDM patients in relation to diabetic complications(糖尿病合併症に関連した長期1型糖尿病患者における等速性筋力,1996年)です。

これによると、膝関節伸筋群 16%,屈筋群17%,足関節背屈筋群・底屈筋群 21%の筋力低下がみられたと報告しています。これは先ほどご紹介したものと同様の結果ですね。しかし、新しいのは、糖尿病神経障害を評価するスコアとこれらの筋力の間には相関関係が認められたのですが、糖尿病腎症糖尿病網膜症との間には相関関係は認められなかったということです。

そのため糖尿病神経障害と筋力低下との関係が考えられます。

糖尿病神経障害は、糖尿病の3大合併症の1つです。

主に足の痺れなどの感覚障害の訴えが多いのですが、運動神経障害もあり得ます。

また、筋力がまったく出せないくらいに低下するわけではないので、自覚症状として気づきにくいということも考えられるかもしれません。

筋力の低下を阻止するために

冒頭でお伝えしたように、筋力をつけることは血糖値を下げるのに効果的です。

そのため、レジスタンス(抵抗)運動を行い、筋力をつけることが必要になってきます。

筋量を増加するためには、一定以上の負荷をかける必要がありますが、高負荷な運動強度では反動的に高血糖を招く可能性があるので注意が必要です。

比較的低強度でも反復した運動により糖代謝を改善する可能性があり、特に高齢者で低強度のレジスタンス運動は有用であるとされています(糖尿病治療ガイドライン2016)。

そして、筋力低下の原因として考えられている糖尿病神経障害の発症・進展の予防も重要です。

糖尿病神経障害の発症・進展の要因としては、

・血糖コントロールの不良

・糖尿病罹病期間

・高血圧

・脂質異常

・喫煙

・飲酒

があげられています(糖尿病治療ガイドライン2016)。その中でも、最も重要な要因は血糖コントロールです。

厳格な血糖コントロールにより、糖尿病神経障害の発症・進展を予防することができると思われます。

有酸素運動とレジスタンス(抵抗)運動により、運動療法の効果は相加的に高まると言われており、厳格な血糖コントロールを行っていくという意味でも、運動を実践していくことが大切ですね。

いかがでしたでしょうか。

筋力低下は転倒や日常生活動作能力の低下につながり、患者さんのQOL(Quality of lige;生命の質)を低下させることにつながってしまいます。

血糖コントロールを良く維持できるように意識しつつ、糖尿病神経障害の発症・進展予防、ひいては筋力低下を予防するために頑張っていきましょう。

それでは!
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