【糖尿病対策】糖尿病で感染症にかかりやすい理由-糖尿病合併症-

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

糖尿病では、感染症にかかりやすいというのは一般的に知られていることです。また、一度かかってしまうと重症になったり治癒が遅れたりすることがあります。

例えば

糖尿病足病変…火傷、外傷、靴ずれ、深爪、乾燥、ウオノメ、タコから起こりやすい

尿路感染症…大腸菌、真菌などから起こる

呼吸器感染症…肺炎、インフルエンザなどから起こる

胆道感染症…胆石などから起こる

といったものがあります。

しかし、なぜ糖尿病では感染症になりやすいのでしょうか。

体を守るシステムのことを「免疫(めんえき)」といいますが、糖尿病ではその免疫機能が低下することで感染症になりやすいと言われています。

免疫をつかさどっているものの1つに好中球(こうちゅうきゅう)があります。

糖尿病では好中球の機能が低下するということを説明してくれている論文がありますので、その論文を参考に好中球の機能や糖尿病による影響をご紹介していきます。

参考文献;斧康雄,糖尿病患者の好中球機能異常,日本化学療法学会雑誌,64(5),pp735-741


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好中球とは

好中球は、白血球の1種で、菌が体内に侵入してきた時にはその菌を食べる(貪食;どんしょく)することで体を菌から守ってくれています。

体内には、とてもたくさんの好中球があります。

体重50kgの場合でおおよそ80億個から300億個程度の数量である。

(Wikipediaより引用)

桁外れで想像できませんね。

白血球は全部で5種類(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球)ありますが、その中で最も多いのが好中球です。

好中球が菌を排除するまでの機能としては、大きく4つに分けられていています。

接着能

遊走能

貪食能

殺菌能

それぞれについてみていきましょう。
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接着能

接着能というのは、感染源がある箇所に移動するために血液中にある好中球が血管の内側にくっつく能力のことです。

この能力が低下しすぎていると感染箇所に行けずに血流に乗って流れていってしまいますし、高まりすぎていると血管の内側にくっついて離れられず血管の外に出ることができないようです。

血管の内側にくっついた好中球は、そこから血管の外に出て感染源に移動していきます。

糖尿病患者さんの好中球は高血糖、血糖による濃度の濃さ(高浸透圧)が影響し接着能は高まるようです。

90-500mg/dLのブドウ糖液に好中球を浮遊させたときの接着能を調べたところ、高いほど接着能は高まっていき300mg/dLで最大になったようです。

つまり、血糖値が高いと感染源があってもそこに好中球が到達できない場合があるということです。

遊走能

遊走能は、好中球が移動する能力のことです。

感染源では、いち早く反応した免疫細胞たちにより炎症反応(サイトカインなどによる)が起きます。この炎症反応は免疫細胞たちが感染源と闘っている証拠のようなものです。

好中球はこの炎症反応を感じ取り(免疫細胞から放出される遊走刺激因子を感知し)、そこに向かって移動(遊走)していきます。

糖尿病患者さんの場合、好中球の遊走能は低下するようです。

つまり、感染源にたどり着くのが遅れてしまうということです。

貪食能

好中球は食細胞(しょくさいぼう)の1つで感染の犯人である細菌などを細胞内に取り込む機能があります。これを貪食といい、細胞内に取り込む能力のことを貪食能といいます。

体は好中球などに貪食してもらいやすいように「オプソニン化」という処理をします。

オプソニン化とは、感染の犯人である細菌に補体(ほたい)という目印みたいなものがくっつき「こいつが犯人です」みたいな感じで好中球などの食細胞が貪食しやすいようにすることです。

好中球の貪食能自体は、糖尿病患者さんであっても健常者であっても変わらないようなのですが、オプソニン化が糖尿病患者さんではうまくいかないようで、結果的に貪食する能力は変わらなくても好中球が感染の犯人である細菌などを貪食しにくくなってしまう可能性が考えられているようです。

殺菌能

殺菌能は感染の犯人である細菌などを殺菌する能力のことです。

その方法は大きく2つあります。

1つは、細菌などを貪食し細胞の中で次亜塩素酸(じあえんそさん)という物質を作り出して殺菌する方法。

次亜塩素酸は市販でも消毒液や殺菌剤として売られている商品の成分になっている物質です。

糖尿病患者さんでは、この次亜塩素酸が出来る過程がうまくいかずに殺菌能が低下すると考えられているようです。

もう1つは、細胞外で殺菌する方法です。

好中球はNETs(Neutro-phil Extracellular Traps)という物質を出すことで細胞外の細菌なども死滅できるようです。

糖尿病患者さんの場合、例えば糖尿病ケトアシドーシスにて増加するケトン体が、このNETsの形成を邪魔するようです。

また、高血糖状態でもNETsの形成が邪魔されるようです。

NETsは適量であれば細菌などを死滅することを助けますが、過剰に形成されると組織の損傷につながってしまう諸刃の剣のようなもので、糖尿病患者さんではNETsが放出されやすく、これが傷の治りを遅らせることにもつながっていると考えられているようです。

いかがでしたでしょうか。

糖尿病自体が好中球の機能を低下させる詳しいメカニズムについてはまだ不明の部分も多いようです。

しかし、今回ご紹介した好中球の4つの働きは、いずれも高血糖、いわゆる血糖コントロール不良の場合に起こりやすいと思われます。

したがって、普段から良好な血糖コントロールを心がけることで様々な感染症へかかるリスクを減らすことにつながるのではないでしょうか。

それでは!
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