こんばんは。
理学療法士のRYUです。
シリーズ糖尿病の合併症の中から、今回は「糖尿病胃腸症」についてまとめてみたいと思います。
糖尿病胃腸症の位置付けとしては以下のようになります。
糖尿病胃腸症は、糖尿病合併症の中でも糖尿病神経障害の自律神経障害による結果として消化器に障害が起こることを言います。
具体的にどういったものがあるのか、「食道運動障害」「胃麻痺」「便通異常」の３つに分けてまとめていきます。
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食べ物がうまく食道を通らない食道運動障害
食べ物は食道から胃腸の中を消化されながら通りますが、ただ重力に従って下に落ちていくのではなく、蠕動運動(ぜんどううんどう)といって胃腸が食べ物を先に先に移動させるように動くことで送り出されています。
この働きがうまくいかなくなってしまうのが、食道運動障害です。
これがうまくいかないと体にどういった悪影響があるのか。
1つは、食物やお薬が胃腸にとどまってしまって「胃食道逆流症(いわゆる逆流性食道炎もこの中に含まれます)」につながってしまうことです。
胸焼けや喉の違和感、咳込みや声が枯れるなどの症状が現れます。
特にお薬を飲まれる際には、お薬がい食道にとどまってしまう可能性をなるべく避けるために十分なお水と一緒に飲まれるなどの工夫をしてみましょう。
また、通常血糖値の上昇を感知しインスリンの分泌を促すのは腸にあるインクレチンというホルモン(糖尿病のお薬であるDPP-4阻害薬でも登場しました)ですが、腸までスムーズに食物が移動していかないのでインスリン分泌のタイミングと胃からの食物の排出のタイミングが合わず血糖値のコントロールが悪くなってしまう可能性があります。
糖尿病の場合、こういった食道運動障害があっても自覚症状が出ない場合があるようです。
ただし、症状が出なくても食道に潰瘍、狭窄(せまくなる)などの影響は出ていますので症状なくとも実害ありということで注意したいですね。
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食後の胃もたれや食後低血糖は胃麻痺が影響している？
胃麻痺というのは、食道運動障害と似ていますが、胃に入った食物の腸への排出がうまくいかないことを言います。
食道や胃の運動を担当している神経は迷走神経(めいそうしんけい)という神経で、これは自律神経の1つです。糖尿病により自律神経が障害を受けることでこういった障害が起きてくるというわけです。
胃の内容物を腸に送り出すのが遅れるので、腹満感や胃もたれ、悪心・嘔吐などを生じます。
(超)速攻型インスリ注射をされている方は、食後の血糖値上昇をうまく抑えられるようにタイミングを図って注射します。(食前など)
胃麻痺があると食物の腸への排出が遅れます。なので食事を摂ってから血糖値が上がってくるまでのタイミングも遅れてくるんです。しかし、インスリン注射は食後通常通りに食物が胃から腸に移動してくるというタイミングで注射しているので、まだ食後の血糖値が上がりきっていない内にインスリン注射の効果が出てしまい低血糖になってしまうということがあります(説明がややこしいかもしれません)。
インスリン注射をしている方で、食後に低血糖になる傾向がある場合には、この胃麻痺の状態かもしれないと考えられます(あくまでも可能性のうちの1つだと思うのですが)。
下痢と便秘を繰り返す便通異常
便通異常の原因としては、先ほども出てきています、胃腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)の影響、そして消化に関係するホルモンバランスの崩れが影響していると言われています。
例えば、モチリン、血管作動性腸管ホルモン(VIP)、ソマトスタチンなどの分泌異常です。
通常であればこれらの消化管ホルモンが食物のカスの水分や腸の運動を調整して排泄をしているのですが、それらがうまく働かないことで下痢もしくは便秘になってしまうようです。
そして下痢と便秘は交代性で繰り返すこともあるようです。もし症状が合致している方がいらっしゃれば医師に相談してみることをオススメいたします。
特にご高齢の方でひどい下痢をした場合には、脱水症状から高血糖高浸透圧症候群などの急性合併症を引き起こす可能性もあり、二次的に他の合併症を引き起こしてしまわないように注意していくことも必要です。
いかがでしたでしょうか。
糖尿病の胃腸の働きがこんな形で関係しているというのは、ご存知でない方も多いのではないでしょうか。
以前も記事でお伝えしたように、糖尿病の合併症は全身で起こりえます。それは、神経や血管が糖尿病により障害を受けるからです。
正しい知識を知ることで糖尿病に詳しくなっていただき、正しい療養生活が送れるように頑張っていきましょう。
それでは！
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