糖尿病教育(学習)入院のススメ-運動指導のための情報収集-

こんばんは。

理学療法士のRYUです。

当院には糖尿病教育(学習)入院という形で入院される患者さんが定期的にいらっしゃいます。

これは、通常の入院(いわゆる具合が悪くなって治療する)とは少しだけニュアンスが異なります。

血糖値が高かったり、血糖値のコントロールのためにインスリン療法を新たに始めるという方、また、糖尿病と診断されたばかりの方などが糖尿病という病気がどのような病気なのか、どのように向き合えば良いのか、どのように生活を気をつければ良いのかについて勉強するための入院と言ってもいいと思います。

糖尿病教育(学習)入院では、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士がチームとなって患者さんの教育を行うことが一般的です。

その中で私は理学療法士として携わっているわけですが、普段、どのようなことを考え患者さんに指導しているのかについてまとめていきたいと思います。

まずは、情報収集ですね。

これは、医療関係者の方々だけでなく、一般の方々も理学療法士がどのような視点で患者さんをみているのかを知る、ようはお互いを知るいいきっかけになれば幸いです。

医療関係者方からしたら「当たり前だろ!」と怒られそうですが。
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カルテから情報収集するもの

カルテには様々な個人情報が載っています。

その中から、必要だと思われる情報を収集しどのような患者さんなのかをある程度把握するようにしています。

私がカルテからチェックしている情報を書き出していきます。

一般的な情報

○お名前

○年齢

○性別

○入院されるまでの経緯(糖尿病での入院歴なども含む)

これは基本的な項目ですね。年齢は、例えば高齢であれば「認知症かどうか」や、「ご自身での療養が難しい場合にどなたが協力してくれるだろうか」などと頭のなかで考えが進んでいく感じです。

また、入院されるまでの経緯については、この患者さんが入院にどのような姿勢で望まれているのであろうかということを考える参考になります。「頑張ろう!」と入院してきて下さるのか「いやだなあ」と思いながらも、お尻を叩かれるように入院されるのかを考えながら経緯を読んでいます。

あとは、何回も糖尿病で入院されている方なのか、初めての入院なのかということも把握したいですね。

社会的な情報

○住所(どのあたりかなーくらい)

○家族構成

○職業

住所は、私の勤務する病院に入院される方は、地域の近い場所にお住まいの方が多いので、言葉で説明することが難しいのですが、場所柄や地域柄のようなものをなんとなく感じるために確認しています。

家族構成は、患者さんの家での役割(妻なのか、夫なのか、子なのか、大黒柱なのか、共働きなのか、専業主婦なのか、ご隠居様なのかなど)を把握するために確認します。

職業の情報を知ることによって、患者さんの生活習慣にメボシをつけることができます。不規則な勤務なのか、力仕事なのか、頭を使う仕事なのか、定年後の方であればどのような仕事をされてきた方なのかで性格と言いますか気質みたいなものを想像します。例えば、警察官であれば我が身を律しておられる方なのではとか、公務員の方であればルールには実直な方なのかなとか、悪い言い方をすると職業イメージになってしまうのかもしれないし、先入観を持ってしまうことはあまりよくないとも思うので、あくまでも参考程度です。

しかし、どのような療養指導が患者さんに合うのかの参考にはなると思います。

身体的な情報

○身長

○体重

○BMI

○血圧/脈拍

身長、体重、BMIは肥満体型なのかそうではないのかを把握するためです。患者さんがインスリン抵抗性(インスリンの効きの悪さ)が主な原因なのか、インスリンの分泌能力が落ちているのかなど考える上での参考になります。

血圧や脈拍は、その数値によっては運動が十分にできない場合があるので確認します。また、高血糖による高血圧なのかその他に原因があるのか、起立性低血圧があるのかなど合併症の影響も示唆されるので把握するようにしています。

医学的な情報

○病型(1型なのか2型なのか)

○検査データ(空腹時血糖値、随時血糖値、HbA1c、インスリン(血中IRI)、Cペプチド、尿ケトン体、尿アルブミン、尿蛋白、eGFR(推定糸球体濾過量)、クレアチニン、Hb(ヘモグロビン)、Ht(ヘマトクリット値)、CRP(炎症値)、AST(肝臓の機能)、ALT(肝臓の機能)、総コレステロール、TG(中性脂肪)、HDL-C(善玉コレステロール)、LDL-C(悪玉コレステロール)など)

合併症の有無

○糖尿病以外の病気の有無

○内服しているお薬・インスリンの種類

1型か2型かは当たり前ですが、必ずチェックですね。

検査データは主に合併症の有無について医師に確認をとるのでその際に必要です。また、合併症の程度によって運動の種類が限定されたり、制限される場合がありますので、医師と検討していく上でも必要な情報になります。

貧血傾向だとHbA1cが見かけ上高くなったり(鉄欠乏性貧血など)低くなったり(腎性貧血、溶血性貧血など)する可能性があるのでHb(ヘモグロビン)やHt(ヘマトクリット値;濃度みたいなもの)もチェックしておきます。

CRPが高かったりして体に炎症が起きている場合には血糖値は高く出る場合があるのでこれもチェックして、なぜCRPが高くなっているのかなと考えたりします。

肝機能は、糖新生やグリコーゲン(糖の貯蔵)、お薬の最終的な排泄経路にもなるので、チェックしておきます。

コレステロールや、中性脂肪はメタボリックシンドロームによるインスリンの効きが悪くなっている可能性などを把握したり、動脈硬化性疾患の危険性の有無などを確認するためにチェックしておきます。

糖尿病以外の病気の有無は運動を行う上でも非常に重要です。例えば、変形性膝関節症があって膝が痛い可能性があったり関節の動きに制限がある場合や、脳梗塞後後遺症で片手足に運動麻痺や感覚麻痺が残ってしまっている可能性などがあり、運動の種類や方法を検討する上で大事な情報になります。

内服しているお薬は、主に糖尿病のお薬であれば、どのような作用のお薬なのかです。DPP-4阻害薬なのか、α-GI薬なのか、SGLT2阻害薬なのか、SU薬なのかBG薬なのかなど。それぞれ併用している可能性もあります。種類によっては低血糖のリスクがありますので、リスクをきちんと把握し注意するためにも確認しておきます。

カルテから普段収集している情報はこのくらいでしょうか。

さらに、入院中に検査するもの(頚動脈エコーや脈波、CVRRなどなど)に関しては適宜結果を確認していくことになります。また、インスリン抵抗性やインスリン分泌能力なども適宜確認していきます。

ここからは、実際に患者さんにご挨拶させていただき、理学療法所見の評価をさせていただくことになります。

カルテからは分からない、私達が評価をさせていただくポイントについてはまた次回にお伝えできればと思います。

それでは!
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