糖尿病と認知症との関係について-【新シリーズ】糖尿病の合併症-

こんばんは。理学療法士のRYUです。

日本の高齢化に伴い、認知症高齢者の増加による孤独死や火の不始末による火災、老老介護、生活保護費の増大、介護保険費の増大など様々な問題が生じています。

私自身、普段勤務先では様々な認知症高齢者に遭遇します。

認知症を持った糖尿病高齢者の方は、お薬がご自身で飲めなかったり、飲み忘れたり、飲みすぎたりしてしまったり、インスリンの打ち方が分からない、低血糖に気づけない、血糖値の自己測定ができない、食事療法が守れないなどなど糖尿病の治療を行う上でも様々な困難を生じてしまい、たびたびご家族の協力や、介護保険サービスの利用をしながらなんとかギリギリの状態での生活を余儀なくされることも、たびたび経験します。

今回は、そんな糖尿病と認知症の関係についてお伝えしていければと思います。認知症をもった糖尿病患者さんという「関係」ではなく、糖尿病を持っていると、認知症になりやすいのかどうかについてという意味での「関係」です。

その他の合併症についてはここにすべて載っていますので、ご覧ください。

こんなにある糖尿病の合併症

それでは、みていきましょう。
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糖尿病だと認知症になりやすいのか

糖尿病を持っていると、主にアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症にそれぞれ2-4倍なりやすいと言われています。

福岡県の久山町で何十年にもわたって行われている「久山町研究」という町民を対象にした大規模な研究の結果によると、

糖尿病の方は、糖尿病ではない方に比べ脳の萎縮がみられ、特に記憶を司る海馬(かいば)で萎縮があるようです。また、糖尿病になってから長い時間がたっているほどその傾向があったそうです。

(参考文献;Hirabayashi N, et al. Association Between Diabetes and Hippocampal Atrophy in Elderly Japanese: The Hisayama Study. Diabetes Care. 2016; 39: 1543-9.)

また、別の久山町研究ですが、

食事2時間後の血糖値が認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と非常に関係があることが示されています。

(参考文献;Ohara T, et al. Glucose tolerance status and risk of dementia in the community: the Hisayama study. Neurology. 2011; 77: 1126-34.)

認知症の原因は、糖尿病だけではないです(もちろんですが)

ただし、糖尿病だと認知症をわずらう可能性が高くなるということを知っていただければと思います。

では、糖尿病で認知症を患ってしまうかもしれない理由とは、何なのでしょうか。
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アルツハイマー型認知症と糖尿病

アルツハイマー型認知症は、認知症の中では60-70%を占め、記憶障害や人格障害などが起こります。徐々に進行し、最終的には意思の疎通や食事などがとれなくなり寝たきりになってしまうものです。

アルツハイマー型認知症の原因は、脳に「アミロイドβ(あみろいどべーた)」という物質が蓄積され、それによって脳の神経が傷害されることだと言われています。

食事を摂って上がった血糖値を下げるために膵臓から分泌されるインスリンは、使用後に肝臓や各細胞にて分解されます。この、インスリンを分解する物質(酵素)には、アルツハイマー型認知症の原因と言われるアミロイドβをも分解する働きがあるようです。

しかし、糖尿病をわずらっていて、血糖値が高い状態ではインスリンは過剰に分泌され、インスリンを分解する物質は、使用済みの大量のインスリンを分解するのに手一杯になってしまい、アミロイドβは分解されず、脳にどんどん蓄積してしまうというのが、糖尿病でアルツハイマー型認知症になりやすい理由だと言われています。

アルツハイマー型認知症は、その原因に関しては色々な説があり、インスリンを分解する物質による影響というのも1つの仮説になっています。

他にも、こんな説も。

脳は一般的には糖を栄養源としますが、脳に糖を取り込む際にもインスリンが必要です。インスリンは脳の「グリア細胞」という細胞に働きかけて糖の受け渡しを行い、脳は糖を分解することでエネルギーを得ています。

アルツハイマー型認知症の方の脳では、このグリア細胞に働きかけるインスリンが不足していることが分かってきており、また、インスリンの働きに関係する遺伝子もアルツハイマー型認知症では不活性化していることもわかってきました。糖尿病でインスリンの効きが悪くなっていることも影響するのかもしれません。

脳血管性認知症と糖尿病

脳血管性認知症は、脳の血管に異常が起きた際(脳梗塞や脳出血など)に生じる認知症です。ある分野では、機能が保たれているのに、ある分野では機能が低下してしまう(例えば計算などは普通にできるのに激しい物忘れがあるなど)ような「まだら認知症」と言われたりもします。

糖尿病の方の場合には、いわゆる動脈硬化からくる脳梗塞が多いです。

糖尿病の方は、そうでない方に比べ脳梗塞をはじめとした動脈硬化性のご病気(他に、心筋梗塞や末梢動脈性疾患など)に3-5倍なりやすいと言われており、脳梗塞後の脳血管性認知症の発症にも注意が必要です。

内容が少し難しくなってしまいましたが、、

認知症は糖尿病の治療を困難にする可能性が高いだけでなく、「その人らしさ」を奪ってしまう可能性がある悲しいご病気だとも思います。

みなさん、ぜひこれからも糖尿病の合併症について知り、これからどうやって予防していこうか一緒に考えていきましょう!

それでは!
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